前回の記事で紹介した「鍵盤ならし」、鍵盤の高さをそろえる工程でしたが、今回はその鍵盤ならしをやったら必ずセットで調整する工程を解説します!
今回解説するのは「鍵盤あがき」です。
またしても、名称だけでは何のことだかわからない工程ですね…
ピアノを演奏するときは、鍵盤を押して音がでますね。
鍵盤は押すとどうなるでしょう……下に沈みますね。
鍵盤あがきは、この鍵盤の沈む「深さ」を調整する工程です♪
この手描きのアクション断面図、めちゃくちゃこすってますね…すみません 笑
鍵盤を押すことによってハンマーが弦を叩くのですが、この鍵盤がどれだけ沈むかによって、ハンマーの挙動はかなり変化してしまいます。
深すぎたり浅すぎたりすると、連打がしにくい、二度打ちといった症状が出ます。そこまでいかなかったとしても、けっこう弾きにくいです。
鍵盤あがきの基準は、250gの加重で鍵盤が10mm下がること。
鍵盤の沈む量は10mm、ハンマーが弦に向かって動く距離はおよそ46mm。
緻密なアクションの構造のおかげで、たった10mmの動きが、46mmのハンマーの運動量に変わるのです。
ピアノはこの10mmという限られた深さを繊細にコントロールして演奏する楽器なんです。
あがき定規という専用の定規を当てて、250gの重さを加えて鍵盤を押し下げ、隣の鍵盤と定規との高さを指先で比較して深い・浅いを判断します。
250gをどうやって測るのかというと、これは完全に技術者の経験に基づく感覚のみ!
調律学校では最初は250gの重りを乗せるなどして覚えていきますが、それも最初の1か月くらい。何度も練習を重ねて、正しい基準を身体にしみこませていきます。
鍵盤ならしでは奥のバランス部分を調整しましたが、鍵盤あがきでは手間のフロント部分を調整します。
フロントキーピンについているフロントパンチングクロスの下に、フロントペーパーパンチングという紙が入っています。この紙の出し入れで、鍵盤の深さを変えられます。
相変わらずややこしい名前の部品だらけですね…
ヤマハのフロントペーパーパンチングは6種類、鍵盤ならしに使う紙と同様、色で厚みがわかるようになっています。
画像上3つの紙は、色も厚みも鍵盤ならしのものと同じですね。
青色の0.08mmってかなり薄いと思いますが、この0.08mmを入れる、入れないで迷うことが結構あります 笑
鍵盤あがきは、前回の鍵盤ならしと非常に関係が深い工程です。鍵盤の高さが高くなると鍵盤はより深く沈み、低くなると浅くなります。
鍵盤ならしを調整したら、鍵盤あがきをどれだけ変えなければならないか…いろいろ計算しながらの調整です。