みなさまこんにちは、もうそろそろ秋も終わりですね。
このコーナーもようやく8回目です。たぶんあと4回くらいです…このペースだと確実に年を越してしまいそうですが…
よかったらもうしばらくお付き合いください。
今回紹介する工程は「ハンマー接近」です。
英語だとLet off(レットオフ)といいます。なんだかかっこいいですね(?)
しかしこの工程、「ハンマー接近」なんて名前のくせに、ハンマー自体の調整をしているわけではないのです。
…解説前からもうややこしくなりましたね💦
みなさん、ピアノの鍵盤をゆ~っくり押したことってありますか?
やってみたことのある方ならおわかりかも知れませんが、ピアノの鍵盤をそーっと押し下げると、音は出ない仕組みになっているんです。
鍵盤を押すとハンマー(赤い〇で囲った部品)が動いて弦を叩いて音がでますが、鍵盤を超ゆーっくり押すと、ハンマーは弦に接触する直前で弦から離れる動きをします。
このときハンマーが弦に最接近したときのハンマーと弦の距離を2~3mmになるよう調整します。(厳密には音域によって異なります)
ここでハンマーと弦が接触してしまうと、二度打ちがおきたり、鍵盤が下がりきらずアクションに余計な負荷がかかったりといったトラブルにつながります。
アクション図を拡大してみます。
アップライトピアノの鍵盤を押すと、
①ジャックがバット(ハンマーの土台の部分)を突き上げ、ハンマーを前進させる
②ある程度までジャックが突き上がると、ジャック下部の出っ張った部分がレギュレチングボタンに接触する
③ジャックの動きが突き上げから旋回運動に変わり、バットの下から抜ける(これをジャックの「脱進」と呼びます)
鍵盤を押して持ち上げられたジャックは、レギュレチングボタンとの接触をきっかけに脱進します。③の時点でジャックはそれ以上バットを持ち上げることはできず、バット(ハンマー)は自らの重みで弦から離れていきます。
つまりハンマー接近というのは、ジャックの動きが突き上げから脱進に切り替わるタイミングを適切にするための工程なのです。
この適切なタイミングというのが、弦とハンマーの最接近の距離が2~3mmのとき、ということです。
わかりづらいですね…
とりあえず、ピアノにおいてジャックという部品はものすごく重要な役割を果たしている、ということだけご理解いただければいいかな、と思います。
実は今まで紹介してきた工程にもジャックに影響を及ぼすものがあるのですが、めちゃくちゃややこしくなるので割愛します💦
とにかくジャックは大事です!
鍵盤をひとつずつゆっくり押し下げ、ハンマーと弦がもっとも近づいたときの距離を目視で確認し、レギュレチングスクリューというネジを専用の工具で回して調整します。
基準を測るためのゲージもありますが、技術者はほとんど目視のみで揃えちゃいます。
ずっとハンマーと弦の隙間を見続けるので目がめちゃくちゃ疲れます。特に低音弦は銅線が巻いてあるので、余計に目がチカチカします。
こう書くと大変な作業ではありますが、個人的には好きな工程です。
鍵盤をゆっくり押し下げると音が鳴らないのは、グランドピアノでもアップライトピアノでも同じです(電子ピアノは仕組みが異なります)
お家にアコースティックピアノのある方は試してみてくださいね。